鼓童新作公演「巡-MEGURU-」(演出:住吉佑太)インタビュー前編!心象風景を巡る舞台

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インタビュー
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※この記事は邦楽村blog!で掲載していたものをリライトして掲載しています。

今回は太鼓芸能集団鼓童の住吉佑太さんにインタビュー!!
住吉さんは11月からスタートする鼓童新作ツアー「巡-MEGURU-」の演出を若くして手がけております!
巡に込めた想いや作曲について、鼓童の未来などをお伺いしました!
それではどうぞ!

太鼓芸能集団「鼓童」紹介

新潟県佐渡市小木にある鼓童村を拠点に活動する太鼓芸能集団。
太鼓を中心とした伝統的な音楽芸能に無限の可能性を見いだし、現代への再創造を試みる。
1981年、ベルリン芸術祭でデビュー。以来50の国と地域で6000回を越える公演を行う。
なかでも、多様な文化や生き方が響き合う「ひとつの地球」をテーマとした
「ワン・アース・ツアー」は、世界各地で3900回を数える。
2012年より2016年まで坂東玉三郎氏を鼓童の芸術監督に招聘。

「鼓童」とは、人間にとって基本的なリズムである心臓の鼓動から音(おん)をとった名前で、
大太鼓の響きが母親の胎内で聞いた最初の音をイメージしています。
そして「童(わらべ)」の文字には、子どものように何ものにもとらわれることなく無心に
太鼓を叩いていきたいという願いが込められています。

巡-MEGURU-紹介

2018年秋から日本全国ツアーを開始する新作「巡」。

鼓童 「巡MEGURU—」公式HP

鼓童入団後まもなく舞台の中心に立ち、演奏だけでなく作曲やアレンジなどでも
才能を発揮してきた住吉佑太が初演出を担う。

住吉が生まれ育った香川に伝わる獅子舞や、徳島の阿波踊り。
栃木や群馬に伝わる八木節や、岩手に伝わる鬼剣舞や獅子躍の唄の一節。
そして佐渡の鬼太鼓や島根の石見神楽など。
郷土芸能をさりげなく織り込み、再創造することによって、
住吉特有の音楽世界が鼓童の太鼓音楽をさらに広げていく。
他にも鼓童が長年演奏してきた「三宅」をさらに昇華させた曲、世界の民族音楽にインスパイアされた曲、
西洋音楽的なアプローチで作られたリズムアンサンブルや即興曲など、全ての曲が本作のために作曲されている。

その音楽的な振り幅には、今までにはない試みが凝縮されている。
今回のテーマ曲とも言える「巡」は舞台に先駆けて18年初旬より公開。
新しい才能が鼓童を未知なる世界へ飛躍させる。

住吉佑太さん紹介

小学校2年生より和太鼓を始める。
2010年研修所入所、2013年よりメンバー、「大太鼓」やソリストに抜擢される。
舞台では主に、太鼓、笛、「混沌」公演ではドラムを担当。
軽やかなバチ捌きを得意とし、また「草分け」「結」「炯炯」「綾織」など
舞台の要となる数々の楽曲を生み出す、鼓童のサウンドメーカー。
2017年、「打男」北米・国内ツアー参加。
「坂東玉三郎がいざなう鼓童の世界」、「幽玄」で坂東玉三郎氏と共演。
2018年「Evolution」ヨーロッパツアー参加、「巡 -MEGURU-」で初演出を務める。

「巡」は心象風景を巡る舞台

ー 本日はよろしくお願い致します。
11月から新作「巡」の全国ツアーが始まりますが、
まずは「巡」という公演名にはどのような意味や想いが込められているのでしょうか。

今回「巡」の演出を担当します住吉佑太です。
よろしくお願い致します。
まず「巡」を作るにあたって「心象風景を巡る」というコンセプトを中心に据えました。
心象風景には今まで自身が見聞きしてきた記憶や知識だけではなく、
「人類ならば誰しもが等しく持つ感覚」も含まれると考えています。

ー 人類ならば誰しもが持つ感覚ですか。

「巡」を作曲した時に鼓童メンバーに感想を聞いたところ
「森だね」などメンバーの多くが同じイメージを答えたのが印象的で、
それがきっかけで「音から心象風景が見える作品作り」に挑戦したいと思いました。
この「巡」を公演のテーマ曲として中心に置き、
舞台が進む中である時は景色、ある時は時間となり、
隙間隙間に様々な世界観が垣間見えるように演出しています。

ー 話を聞いて、輪廻転生や瞑想といった言葉が思い浮かびました。

「巡」という曲自体がひとつの音形を反復して展開していき、
音が巡る中でうねりとなってひとつの形になっていきます。
だんだんと高揚していき気持ちよくトランスしていく感覚とでも言いますか。
人間の心の底にある、自分自身でも意識できない部分を揺さぶるような舞台にしたいと思っています。
今回の公演には複合的な意味を持たせているので、
「巡」という言葉から皆さんが感じる印象を、皆さんの心の中で一巡してもらいたいですね。

音が先行した曲作り

ー 続きまして、住吉さんは今回の公演曲の大部分をご自身で作曲されたと聞きました。
まずは作曲をはじめたきっかけをお聞かせください。

子供の頃、それこそ10歳くらいから作曲はしていました。
きっかけは地元香川の創作和太鼓グループに所属していた時で、
創作和太鼓はオリジナルの楽譜で演奏をするリズムアンサンブルなんですけど、
その楽譜を見てすぐに楽譜というものが好きになりましたね。
音符を書くことにもすごくハマっていて、短いリズムアンサンブルをひたすら作っていました。
自分の曲を人前ではじめて演奏したのもその和太鼓グループで、
自分のイメージしたものが形になり伝わる面白さを体験しました。

ー表現することに喜びを感じたと。

そうですね。
自分のイメージを表現するにしても絵など違う分野だと全然ダメでしたね…
でも、音楽だと表現できたんです。
実は高校生の時はシンガーソングライターもやっていまして、
その時も自分の中にあるものを形にして伝えるということがすごく楽しかったです。
今回の「巡」も僕の中にあるイメージの影響がとても強くて、
それを具現化していく作業の中で結果的にほとんどが僕の曲になってしまいました。

ー 「巡」の作曲をした時、インスピレーションはどこから湧いてきましたか。

「巡」に限らずなんですけど、僕が普段曲を作るやり方として曲名やテーマが先行しないようにしています。
曲名やテーマを先に決めると曲の可能性が狭くなり、世界観も僕の中にあるものだけになってしまうからです。
曲のことは常に考えているので、ふとした時にひとつのグルーブだったり具体的なリズムやメロディーが湧いてくる瞬間があるんですね。
そうした音が先に出てきて、それらを膨らませていくのが僕のやり方で、曲名やコンセプトを付けるのはその後の作業だと思っています。

ー 自然と湧き出た音を基準に作曲していくんですね。

今回も新しい舞台を作ってみないかと言われた時に
ちょうどその頃作っていたマリンバと太鼓を使った曲があって、
「これって巡っぽいな」と感じて「巡」というタイトルを付けました。
なので、コンセプトが先行して曲を作るのではなく
シンプルに音としての気持ち良さやかっこよさが先行して作るようにしています。

ー 確かにその作曲方法だと嘘が無いですし、思わぬ名曲が誕生しそうですね。

この作曲方法のせいでコンセプトをまとめるのに苦労することもあるんですけど笑
でも、基本的には音が先行した曲作りをしていますね。
知識に訴えかけるものではなくて、もっと本能的に音と向き合いたいというか…
直感的に音を選んでいきたいですね。

ターゲットを意識した舞台演出

ー 今回ひとつの舞台を演出するにあたって、最も意識したのはどのような点でしょうか。

邦楽村さんでやろうとしていることと通じるところもあると思うのですが、
一人の太鼓打ちとして和楽器の魅力をどんどん伝えていきたいと考えて演出をしました。

ー 和楽器の魅力、たくさんの方に伝わってほしいですよね。

太鼓をよく知らない方が思う太鼓への固定概念って、やっぱりあると思うんです。
特に若い世代の方に太鼓をやっているというと「え?お祭りの?」と返ってきたり、
他ジャンルの演奏家の方も太鼓にあまり興味を持たれていないなというイメージがありまして…
そうした固定概念を一新したいという想いがあります。
だからこそ今は太鼓の魅力を押し出すのではなく、
あえて太鼓らしくない部分、ポップでキャッチーな部分を一生懸命作り込んで、
太鼓の世界への入り口を広げる作業をしています。
この太鼓の世界に至るまでの入り口をどんどん広げていくことが
鼓童が新作を作り続ける意義であると思っています。
もちろんそれは決して太鼓の魅力をないがしろにするということではないんですけど。

ー 作り込まれた「巡」のミュージックビデオも、
古くからの鼓童ファンだけでなく新しいファンにも伝えたいという想いからでしょうか。

そうですね。
和太鼓の世界にもプロモーションビデオというものはあるのですが、
曲の世界観を増幅する映像は恐らくはじめてなので、大きな挑戦でした。

巡-MEGURU- Music Video

衣装も今の僕たちの世代の感覚で作ってみたり、
曲も古典や郷土芸能の要素はエッセンス程度に入れるバランスにしました。

ー 以前鼓童代表の船橋さんにインタビューした際、
住吉さんのような若い世代の太鼓の固定概念を振り払うような活躍に期待しているとおっしゃっていました。

太鼓の固定概念を振り払うのと同時に、
やっぱり鼓童として大切にしてきた演目や衣装なども大切にしていく必要があると思っています。
伝統をやりながら同時に新作もやっていく。
古典の鼓童と新作の鼓童。
この二本柱をプレイヤーはしっかりと行き来しながら、
グループとしての振り幅を強くしていければと思っています。

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ー 新作に対して「鼓童は変わってしまった」という意見も耳にします。

そういった意見も確かにありますね。
しかし僕個人としては、鼓童が変わったのではなく鼓童の側面が増えていると捉えています。
経済の世界にはターゲティングやペルソナといった言葉がありますが、
鼓童もそうしたことをしていってもいいんじゃないかと思ってます。
「この作品は太鼓が好きな人に見てもらいたい」
「この作品は太鼓をほとんど知らない人に伝えたい」
色んな方向に発信しても良いと思うんです。
それは鼓童が今後一切そういう方向にいくということではなくて、
集団が多面化していくことが大事なのかなと思っています。

ー 「巡」でいうと、太鼓をあまり知らない若い世代をターゲットにしていると。

もちろん昔からの鼓童ファンの皆さんにも見てもらいたいですし
太鼓と一対一で向き合う、力強い人間の魂を感じる曲も「巡」には入っているので、
太鼓が好きな方にも満足して頂けるかと思います。
しかし今回の舞台は太鼓をあまり知らない、
僕たちと同世代の皆さんに見てもらいたいという想いがすごく強くありますね。
太鼓音楽の中にマリンバなどを使いポップさやキャッチーさを前面に出して、
かっこいい・気持ち良い・踊りたいなどといった気持ちになってもらえる舞台にしています。
インストのライブに来る感覚で来てもらえればいいなという作品ですね。
ミュージックビデオがそのきっかけになってくれれば嬉しいです。

「巡」の詳細・チケット購入情報

「巡」にかける想いや作曲・演出など、大変興味深い内容のインタビューとなりました!
そしてなんとこのインタビュー、次回に続きます!
後編は同じく鼓童若手メンバーの山脇千栄さんにも語って頂きます!乞うご期待!

※※※インタビュー記事後編はこちら!※※※

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さてさてそんな「巡」の全国ツアーですが、
最終公演である東京公演(2018年12月19日(水)〜2018年12月23日(日))のチケットが本日発売開始となります!

以下公演スケジュールとなっており、クリックすると詳細確認・チケット申込みページへと進みます!
鼓童が日本全国を駆け巡る本公演、お近くの会場でぜひ体験してください!

 

こちらの公演はすべて終了しております。

  • 2018.11.03(土) 香川県三豊市 三豊市文化会館マリンウェーブ
  • 2018.11.04(日) 愛媛県松山市 松山市総合コミュニティセンター 文化ホール
  • 2018.11.07(水) 高知県高知市 高知市文化プラザ かるぽーと
  • 2018.11.09(金) 広島県広島市 アステールプラザ 大ホール
  • 2018.11.10(土) 山口県下関市 菊川アブニール
  • 2018.11.13(火) 岡山県倉敷市 倉敷市芸文館
  • 2018.11.15(木) 鳥取県鳥取市 鳥取市民会館
  • 2018.11.17(土) 山口県岩国市 シンフォニア岩国 
  • 2018.11.21(水) 〜2018.11.22(木) 大阪府大阪市 森ノ宮ピロティホール
  • 2018.11.23(金) 〜2018.11.24(土) 滋賀県大津市 滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール 中ホール
  • 2018.11.27(火) 愛知県刈谷市 刈谷市総合文化センター
  • 2018.11.28(水) 岐阜県多治見市 多治見市文化会館(バロー文化ホール)
  • 2018.11.30(金) 新潟県新潟市 新潟県民会館
  • 2018.12.01(土) 長野県長野市 長野市芸術館
  • 2018.12.07(金) 千葉県船橋市 船橋市民文化ホール
  • 2018.12.08(土) 神奈川県茅ケ崎市 茅ケ崎市民文化会館 
  • 2018.12.09(日) 埼玉県熊谷市 熊谷文化創造館 さくらめいと
  • 2018.12.11(火) 神奈川県横浜市 神奈川県民ホール
  • 2018.12.15(土) 東京都調布市 調布市グリーンホール
  • 2018.12.16(日) 東京都福生市 福生市民会館
  • 2018.12.19(水) 〜2018.12.23(日) 東京都文京区 文京シビックホール大ホール