三味線(しゃみせん)ってどんな楽器?楽器についてやジャンルについて解説します。

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三味線(しゃみせん)とは

三味線(しゃみせん)は弦楽器に分類される和楽器です。日本では歌舞伎などの伝統芸能や阿波踊りなどのお祭りで耳にする機会が多いのではないでしょうか。

 

木材で作られた(どう)、(さお)を主なパーツとし、糸巻き(いとまき)、音緒(ねお)といったパーツで胴から棹にかけて三本の絃(げん)を張ります。

三本の絃を(ばち)で弾きながらも、音程は絃を指で抑えることで調整します。三味線にはギターのようなフレットはなく、勘所(かんどころ)と呼ばれるポイントがあるので、そちらを押さえて様々な音を出しながら演奏します。

 

三味線の構成パーツ

三味線は見た目は非常にシンプルな楽器ではありますが、三味線を構成するパーツは意外と多くなっています。 (撥を除く)


① 胴(どう)

三味線の主パーツでもあり、音を鳴らす要の部分。

主に花梨(かりん)を使用し、4枚の板を貼り合わせて作られている。皮を張ることから太鼓とも呼ばれ、上下には棹を通すための穴が空いている。

胴の内側に彫りが施されているものもあり、彫りがないものを丸打(まるうち)胴、綾杉(あやすぎ)彫りという彫りが施されたものを綾杉胴と呼ぶ。

彫りにより音がより複雑に反響し、良い音色になると言われているが、科学的な裏付けはない。


② 皮(かわ)

胴に張られている皮。皮が張られていることにより、絃の振動が太鼓で増幅し、音を反響される。

皮は演奏ジャンルにもよるが、主に犬皮、猫皮(四つ皮とも呼ばれる)が使われているが、最近ではカンガルー皮や山羊皮などを張る演奏者もいる。

しかし、動物愛護の観点や、メンテナンス性から人工的に作られた皮を張る演奏者も増えている。人工皮は三味線用に作られたものから、他で使用されている人工繊維の中から使えそうなものを探して三味線に応用している場合などもある。

皮は専用の工具と手を使って張る方法と、機械(フルオートではない)を用いて張る方法などがある。皮を張る時は人工皮は接着剤が多いが、動物皮は寒梅粉や白玉粉を使用して張られている。これは強度などに由来する部分が大きい。


③ 棹(さお)

胴と同じく三味線の主パーツでもあり、音程を調整する要の部分。

主に紅木(こうき)、紫檀(したん)、花梨(かりん)を使用しており、三味線の世界では紅木が高級とされている。

どの木材も日本で取れるものはなく、全てが海外輸入の木材となっている。昔は日本産の紅木があり、音が良かったという話を聞くことがあるが、日本では紅木を産出することはできない為、何かしらの話が混ざって生まれた寓話である。

ここではパーツ上棹と呼んでいるが、棹の上部は天神(てんじん)と呼ばれ、糸巻き下にある膨らんでいる部分は乳袋(ちぶくろ)と呼ばれている。

棹は分割できるタイプとそうではないタイプがある。分割できないものについては延べ棹(のべざお)、分割できるものは三つ折り(みつおり)、と呼ばれる。三つ折りの場合は持ち運びの際分解してコンパクトに持ち運ぶことができる。

分解した棹はそれぞれ、上棹、中棹、下棹と呼ばれる。

また、分解した部分に溝があるものがあり、これはほぞと呼ばれる。ほぞをはめる穴の部分に金で補強がされているものは金ほぞと呼ばれ、高級な三味線を確認する際の一種のステータスとなっている。

分解した棹を持ち運ぶ、保存する際そのままだと折れる可能性があるので、保護するための仮継(かりつぎ)というパーツも存在する。これは三味線一つずつに合わせて製造される為、他の三味線に使い回すことは原則難しい。


④ 音緒(ねお)

音緒は糸を固定して糸巻きと繋ぐことで糸を張る為のパーツ。

胴から飛び出ている棹に引っ掛けるようにして取り付け、音緒にある糸を取り付ける為の輪っかに糸を止め、それぞれの糸を糸巻きまで張る。


⑤ 糸巻き(いとまき)

糸巻きも音緒を同じく、絃(げん)を固定する為のパーツ。

糸巻きについて糸穴(いとあな)に糸を通し、巻き取っていくことで糸を固定する。固定するだけでなく、糸巻きの回し具合によって糸の張力を変え、調弦(ちょうげん)を行う。

棹に取り付けられている、糸巻きを固定する為の金具は福林(ふくりん)と呼ばれている。

糸巻きは主に黒檀(こくたん)、紅木などの木材や象牙などが使用されている。近年ではアクリルによる製品も増え、透明なアクリルだけでなく、透明なアクリルに色付けしたものや、乳白色で見た目が象牙のような製品も存在している。

材質による音の違いはないが、材質による強度や握りの具合、特性などが異なる。

木材、象牙は手の汗や湿気などを吸うが、アクリルは吸わない。また、アクリルはしっかり固定できる反面、中途半端だと他の素材より緩んでしまうことがあります。木材は微調整が効く反面、経年による摩耗が大きく、調整や交換などの必要性が他のものに比べて高いです。 象牙は水分を吸う反面、湿度が高い時期などで水分を吸いすぎてしまい、固くはまってしまうことがあります。それにより、無理やり回すことで破損する、といったことがあります。

また、糸巻きは形状も色々あり、「素六(すろく)」「面取(めんとり)」「宇柄(うがら)」「宇柄面取(うがらめんとり)」「螺旋(らせん)」といった形状をはじめとしたものが数多く存在しています。(形状の記事についてはこちらで詳しく解説しています。

基本的な形状が同じな三味線のパーツの中で、オシャレや楽器としての個性を出すなど、アピールできるパーツでもあります。


⑥ 糸・絃(いと・げん)

糸・絃も音を出す上で必須の構成パーツです。

写真の左側から見て、一の糸(一番太く低音)、二の糸(一と二の中間)、 三の糸(一番細く高音)と呼ばれています。

糸の材質は絹・ナイロンやテトロンといった人口の糸があります。ジャンルによっては絹を使うこともありますが、最近では人口の糸を使っている場合がほとんどとなっています。


⑦ 駒(こま)

駒は張られている絃と皮の間に挟み、糸で押さえるように固定しつつ、糸の振動を胴に伝える役割を果たすパーツです。

駒は他のものに比べると材質は多様で、木材、骨、竹、水牛、プラスチックなどの材質のものが存在しています。

糸を乗せる部分には、糸用の溝が掘られており、糸がずれないようにもなっています。


※ 撥(ばち)

三味線そのものの構成パーツではないですが、三味線を弾く上では重要となるパーツ。

材質は鼈甲、象牙、水牛、アクリル、木材など様々なものが存在している。また、三味線ジャンルによって大きさなども異なる。

写真の小さな撥はミニチュアの撥だが、実際にこのような小さい撥を使って演奏するジャンルも存在している。


その他

構成パーツとして必須ではないのですが以下のような付随パーツも存在しています。

・胴(どう)かけ:胴にとりつけ、演奏時に滑りづらくするパーツ

・天神(てんじん)カバー:天神を保護するパーツ。演奏会などの際は外したりする

 

三味線の種類

様々なパーツで構成されている三味線ですが、大きく分けると三つの種類が存在します。

  1. 細棹(ほそざお)
  2. 中棹(ちゅうざお)
  3. 太棹(ふとざお)

それぞれその名前の通り、大きさが異なるのですが、何の大きさが異なるかというと、棹と胴の大きさが異なります。

また、細棹においては大きさだけでなく、棹の形状も異なります。他の三味線では胴に近い部分まで直線的ですが、細棹では鳩胸(はとむね)と呼ばれ、曲線を描くような形状になっています。

それぞれで特徴がありますが、この違いはなんなのかというと、演奏するジャンルによって使用する三味線が異なる、ということに繋がります。

 

三味線のジャンルと対応する三味線

三味線のジャンルは非常に多様ですが、大きく分けると以下のような形となります。

長唄(ながうた)
小唄(こうた)
端唄(はうた)
地唄 / 地歌(じうた)
民謡(みんよう)
津軽 / 津軽三味線(つがる)
義太夫(ぎたゆう)
浪曲(ろうきょく)

それぞれのジャンルによって使用する三味線の大きさなどが異なるのですが、それを当てはめていくと以下のような形になります。

細棹長唄
小唄(中棹の場合もあり)
中棹地唄 / 地歌
民謡(太棹の場合もあり)
端唄(細棹の場合もあり)
太棹津軽 / 三味線(民謡の場合もあり)
義太夫
浪曲

ジャンルと三味線で対応させていますが、厳密ではないジャンルもあります。習う場所によって違うということもあるので、この辺りは注意が必要です。

 

各ジャンルと三味線の大きさについては上の通りですが、各ジャンルがどのようなものかについても大まかに解説します。


長唄(ながうた)

長唄は歌舞伎の伴奏として生まれたジャンルです。歌舞伎で使用する音学として生まれましたが、江戸以降は音学ジャンルとして独立もし、今も多くの人に嗜まれるジャンルです。


小唄(こうた)

小唄そのものは大衆のはやり唄であり、三味線で指す小唄はその時に演奏された三味線(加えて唄も)について指しています。小唄というジャンル自体が端唄から派生しています。


地唄 / 地歌(じうた)

関西で確立していた純粋な音楽としてのジャンルです。三味線音楽自体は長唄以前より、京都など関西で発展してきました。演劇などで使用されるものも関西にはありますが、純粋な音楽として確立していたものを地歌と呼ばれました。

今では関西だけではなく、総称として呼ばれていますが、地歌系では、三味線、箏、尺八(胡弓)などを用いて演奏する曲が数多く存在し、三曲と呼ばれたりしています。

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民謡(みんよう)

民謡自体は三味線ではなく、民間で歌われていた歌を指し、世界中で民謡、というものが存在します。

しかし、三味線において民謡を指す場合は日本の各地で伝わってきた労働歌、伝承歌などを指します。わかりやすくいうと「〇〇節」といったような曲です。

唄に合わせて伴奏で弾く三味線のコンビネーションは非常に素晴らしいものと言えます。大会も数多くある程、三味線の中でもメジャーなジャンルといえます。


端唄(はうた)

端唄も小唄と同じく、庶民の間で流行っていた音楽のジャンルです。主に江戸で流行していましたが、端唄が元となり、小唄が生まれるなどしてきました。主に短い歌と三味線を合わせて演奏するスタイルです。


津軽 / 津軽三味線(つがる)

津軽三味線は青森県の津軽地方で成立した三味線ジャンルです。津軽地方の民謡伴奏が元になっている為、民謡と同じように〇〇節といった曲を弾きますが、三味線だけで弾くことも多かったりします。三味線同士の会話などでは津軽、だけで通じることもありますが、基本的には津軽三味線、と書くことが多いです。

また、本質的には異なりますが、現代的な弾き方や打楽器を思わせる撥捌き(ばちさばき)で演奏する場合や、曲などについて津軽三味線、と言われることもあります。


義太夫(ぎたゆう)

大坂の竹本義太夫がはじめた浄瑠璃の一種で義太夫節と呼ばれますが、略して義太夫と呼ばれることが多いです。三味線の場合はそこで演奏される三味線を指します。義太夫自体は浄瑠璃の一種なので、三味線だけのものではないという点は注意が必要です。


浪曲(ろうきょく)

浪曲は三味線を伴奏にして物語を語る/演じる語り芸です。こちらについても三味線がメインというよりは伴奏に三味線が使われる、という部分があります。

 

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三味線の歴史やジャンルについての話は、書籍や専門の協会など詳しくまとまっている場合がほとんどですが、実際に演奏したい、三味線の取り扱いや豆知識などについてはまとまっていない場合があります。

和楽器メディアでは、三味線がやりたい、という初心者の方に役立つ記事や豆知識などについても掲載していますので、ぜひ併せてご覧くださいませ。

 

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