【コラム】一度限りのお客様。そこから教わったもの。

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コラム
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「一期一会」

 

人と人が出会う事は縁あっての事。もしかしたら今日会って、今後会わないかもしれない人は沢山いるかもしれない。いや、むしろそういう人の方が人生の中では遥かに多いだろう。

だからこそ出会いを大切にする。出会いから続いていくように努めていきたい。今日は人生の数ある出会いの中「名もなき演奏会で会った一人のお客様と、そこから考え・学んだこと」のお話。

 

私は以前、高校の和太鼓部で和太鼓の指導をしていました。その部活では、毎年夏に山中の宿舎を借りて合宿を行います。厳しい練習を経て、合宿最終日に、合宿の成果発表と、宿舎の方への感謝の意を込めて演奏会を開催していました。

とある年の合宿の宿舎は、レストランや入浴施設が併設されており、一般の方もいらっしゃる施設でした。なので、演奏会はお客さん出入り自由という感じでの演奏会を行いました。学生達の名も無い小さな演奏会。一度限りのお客様との出会いはその演奏会での事でした。

 

演奏会が始まってすぐに、駐車場に一台の車が停まり、初老の男性と中年の男性が降りてきました。「親子かなぁ?天気もいいし食事に来たのかな?」なんて思っていると、演奏会会場の方へ来てくださいました。「見て行ってくれるなんて優しい方だなぁ」「お客さんが多いのはありがたいことだ」とその時はそんな事を思ってました。

無事に演奏会が終わると、生徒・顧問・指導者が、見てくださったお客様のお見送りをします。その時、初老の男性のお客様が、ふと立ち止まって挨拶してくれたのです。

「ありがとうございます、楽しかったです。私も昔太鼓をやっていたんですよ」

そう声をかけてくださいました。生徒を始め私達は嬉しくなって「来年も良かったら見に来てくださいね!!」とお声がけをしました。そうするとお客様は「それはかないません。病気なのでもう長くないんですよ」と申し訳なさそうに、でも私たちを気遣いながら一言おっしゃいました。

その瞬間胸にある思いがよぎりました。

「この方が太鼓をみる機会はあとどれくらいあるのだろうか?」
「もしかしたら、今日見た我々の太鼓が最後になるのではないか?」

さらに、

「我々の演奏はこの方に届いただろうか?」
「思い出に残るような演奏だっただろうか?」

などいろいろな思考が頭をよぎりました。お客様は出口で我々に一礼し、最後まで丁寧に接しておかえりになりました。名前も知らない、もう会うことは叶わないであろう一人のお客様。優しく紳士的でとても印象に残るお客様。生徒達の演奏を聴いて少しでも太鼓をやっていた頃を思い出し楽しんでもらえたら嬉しいと今でも思います。

なんとなく分かってはいても実感のなかったこと。それは「演奏会に来る人は一期一会なのだ」ということ。

今回のお客様のようなことは稀なのかもしれない。しかし、たまたま演奏会に来てくれてそのあとはもう会わないことはおそらく多いはず。この出会い以降、一層「演奏会でお客様の為に演奏する」という意味を深く考えるようになりました。

「演奏会や演奏の目的」
「どうしたら満足してもらえるのか?」
「来て良かったと思ってもらうには?」

色々考えると、以前は考えていたようで本質まで深く考えていなかったんだということに改めて気付かされました。一期一会の出会いの中で最高のものを届けるよう努めることが、演奏する側の責務なのだ、ということを一度限りの出会いの中で教わりました。

一度限りのお客様がほとんどの中で、最高のものを届けられるよう努め、意識し、演奏すればお客様との縁が繋がり、永く続く「縁」へと変わっていくのではないでしょうか。

一期一会の機会をあなたならどう繋いで行きますか?

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