三味線や箏に触れていると、「じうた」という言葉をよく聞くかと思います。
漢字に直すと「地唄/地歌」と表すこの言葉、改めて考えてみると…不思議じゃありませんか? 「和楽器音楽のジャンルのひとつである」ということは、執筆者も知っていました。
でも例えば、「地」って何を指しているのでしょう? どうして「唄/歌」って分かれているのでしょうか?よく聞きそして、よく使う言葉でもありますが、 ちゃんとした意味って調べたことがないかも…?
そこで!今回はこの「地唄/地歌」に焦点を当てて、ご紹介してみたいと思います。そもそも「地 唄/地歌」とは何なのでしょうか?
1.「地唄/地歌」の意味と語源
和楽器音楽の用語としての「地唄/地歌」は、基本的には三味線音楽の一種を指す言葉です。
ですが、 その元々の意味は「その地方だけでうたわれている俗歌(=流行歌)」でした。つまり、ある「地方」だけで流行っている歌のことを指していたようです。
では、現在使われている「地唄/地歌」の「地」とは、 どこを指しているのでしょうか。おそらくそれは、関西地方、特に京都・大阪周辺(=上方)のことだと思われます。
なぜなら、和楽器音楽のジャンルとしての「地唄/地歌」はこの地域で起こり、発展したからです。
さらに江戸時代、江戸で流行していた三味線音楽がこの地域に流入されるに至って、江戸から流入したものを「江戸歌/唄」と呼んだのに対し、この地の人々が「自分たちの土地の唄」ということから、「地唄/地歌」と呼ぶようになったようです。
2.地唄と地歌は違うの?
現在、この語はほとんど区別して使用されることがないのが実情…のようです。
種々の辞書・辞典を参照しても、「地唄・地歌」や「地歌/地唄」という形で、同じものとして説明されていることが多かったです。
そしてこれは歴史的にも、厳密に特定するのが難しい事柄のようです。例えば、日本三曲協会では「唄/歌」の表記に関して、次のような記述をしています。
「唄(うた)」と「歌」ですが、邦楽の歌は「唄」と書く方が古典的であるように思われています。しかし、これも必ずしもそういえません。「ことうた」とか「じうた」といった場合は、むしろ「箏 歌」「地歌」と書かれることもあったのです。特に「地歌」は、もともと関西で起こった名称ですし、 関西では、ほとんど「地唄」と書いた例はなかったようですから、この場合も「唄」という字が当用漢字にはないことですし、ここでは「地歌」という書き方を、むしろ正式なものと認めておきます。
しかし、人形浄瑠璃では「地唄/地歌」の曲節を取り入れた部分のことを、「地歌」と表現することが多いようです。
3. おわりに
以上、「地唄/地歌」についてまとめてきました。
日常的に使っている言葉でも、改めて調べてみると、 色々な発見があり、非常に勉強になりました! 歴史の勉強って大切ですね!!
【参考文献】
- 『日本国語大辞典』(第二版)、小学館、2000~2002 年。
- 『世界大百科事典』(改訂新版)、平凡社、2014 年。
- 『国史大辞典』、吉川弘文館、1979~1997 年。
- 日本三曲協会「三味線楽及び地歌とは」
URL: https://www.sankyoku.jp/syamisen.php (2021 年 10 月 30 日確認)
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