太鼓芸能集団”鼓童”代表の船橋裕一郎さんインタビュー!鼓童特別公演2018「道」にかける想い

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インタビュー
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※この記事は邦楽村blog!で掲載していたものをリライトして掲載しています。

 

今回は太鼓芸能集団鼓童代表の船橋裕一郎さんにインタビューさせて頂きました!
6月に控える鼓童特別公演2018「道」に関する話題を中心に、
鼓童が大切にしていることや和太鼓界の未来などについてお伺いしました!

鼓童(KODO)


photo by岡本隆史

新潟県佐渡市小木にある鼓童村を拠点に活動する太鼓芸能集団。
太鼓を中心とした伝統的な音楽芸能に無限の可能性を見いだし、現代への再創造を試みる。
1981年、ベルリン芸術祭でデビュー。以来50の国と地域で6000回を越える公演を行う。
なかでも、多様な文化や生き方が響き合う「ひとつの地球」をテーマとした
「ワン・アース・ツアー」は、世界各地で3900回を数える。
2012年より2016年まで坂東玉三郎氏を鼓童の芸術監督に招聘。

「鼓童」とは、人間にとって基本的なリズムである心臓の鼓動から音(おん)をとった名前で、
大太鼓の響きが母親の胎内で聞いた最初の音をイメージしています。
そして「童(わらべ)」の文字には、子どものように何ものにもとらわれることなく無心に
太鼓を叩いていきたいという願いが込められています。

鼓童代表 船橋裕一郎

考古学を専攻していた学生時代に太鼓に出会う。
1998年に研修所入所。2001年よりメンバーとして舞台に参加、太鼓、鳴り物、唄などを担当する。
これまでに国際芸術祭「アース・セレブレーション」城山コンサートや、「P.P.C」「五衆」など小編成公演の企画演出、「BURNING」などの作曲も行う。
交流学校公演、海外での共演など様々な分野を牽引。
落語やプロレス観戦など様々な趣味を持ち、柔らかな口調と人情味溢れる人柄でメンバーの頼れる相談役。
また2012年より4年間、鼓童の副代表、また2016年1月より鼓童代表に就任し、鼓童全体を率いる。

海外で盛り上がりを見せる和太鼓

邦楽村です。本日はよろしくお願いします。

鼓童代表の船橋裕一郎です。
本日はよろしくお願いします。

最初の質問ですが、現在鼓童は「鼓童ワン・アース・ツアー2018Evolution(螺旋)」でヨーロッパ各地を訪問し公演を行なっていますね。
公演の盛り上がりや海外の方の和太鼓に対する反応はいかがでしょうか。

海外では日本の皆さんが思っている以上に日本の太鼓が盛んで、
プロの太鼓グループも各国に点在しています。
今回のツアーでは公演と並行してワークショップも開催したのですが、
太鼓未経験の方から太鼓グループで活躍している方まで幅広い方が参加してくれました。
ワークショップへ取り組む姿勢や、公演への眼差しから真剣さが伺えました。

海外でも和太鼓が盛んというのは意外でした。日本と比較して、ヨーロッパの和太鼓奏者の特徴はどんなところにありますか。

ヨーロッパでは自分たちの独自のリズムや表現で演奏している方が多いかもしれません。
また今回のツアー中にドイツで開かれた太鼓カンファレンスでは、
参加した各太鼓グループの代表が演奏・ワークショップ・ディスカッションを行なっていました。
こうしたシェアする文化の上での広がりに、私たちとしても大変刺激を受けました。
今後はこうした海外独自の文化を日本に紹介していけたら、
鼓童が海外各地で公演する意義がより出てくると思っています。

海外での公演という貴重なお話ありがとうごいます。

伝統に立ち返る ー 鼓童特別公演2018「道」

次の質問ですが、ヨーロッパツアーの後には鼓童特別公演2018「道」日本ツアーが控えていますね。
船橋さんは今回「道」の演出を担当されていますが、どのような想いで臨んでいますか。

「道」の公演を行うのは、「自分たちの太鼓とはどのようなものなのか」と
今一度過去を振り返り学んだほうがいいのではないかという想いからです。
鼓童はここ5~6年新作を発表し続け、どちらかといえば「革新」に重きを置いてきたように思います。

前に進むばかりでなく、過去から学ぶことも大切ということですね。

そうですね。
このスタイルはほぼ半世紀近く継続してきた舞台を基調とし、
「道」というタイトルをつけてからは今回で3度目になります。
継続して伝統に立ち返り、深め、洗練させていく作業を行うことで、
「伝統」と「革新」の両輪を強くしていきたいという想いがあります。
まさに道のように連なっていく演奏活動を自分たちの軸とし、
そこをより強くした上で新たな分野に挑戦していきたいですね。

今回「道」を演出するにあたり、船橋さんがこだわった点を教えてください。

「道」に関しては、革新的な演出に重きを置かない点ですね。
落語を思い浮かべてもらえると分かりやすいかと思います。
内容は噺家の解釈で変わるけど、ここは外せないという大枠や大筋は変わらないですよね。
「道」も大枠は変わらないのですが、鼓童が35年の歴史の中で吸収してきたものを考え、
稽古を重ね、今の自分なりの解釈を加えた、曲や構成になっています。

「道」についてありがとうございます。
伝統を見つめ直し、新しい道を進む公演「道」、鼓童の原点が見られる公演となるわけですね。

「今できる最高の音を出したい」 ー 鼓童の芯に迫る

次に、鼓童について色々と聞かせてください。
鼓童といえば、研修所での生活が非常にストイックであることで有名です。
研修所時代の楽しかったことや辛かったことはありますか。

研修所の2年間では、正直楽しいと思ったことは全くなかったですね笑
本当に肉体的にも精神的にも追い込まれました。
それでも研修を終えた時にはやってよかったという思いしかなかったですし、
今でも悩んだりした時に立ち返るのは研修所時代です。
研修所での2年間は今でも誇りに思える時間ですね。

研修所での生活は、鼓童メンバーにとっての原点なのですね。
鼓童がプロの太鼓集団として大切にしていることはどういったところでしょうか。

音に対するこだわりや追求していく姿勢は強く持っています。
太鼓の音にも様々な種類や質がありますし、
会場も劇場やコンサートホールなど場所によって音の広がりが全然違うのですが、
その都度職人のように細かく考え決めています。

鼓童メンバーの筋肉は太鼓を打ちながら自然についた筋肉、つまり打つための筋肉なんですね。
そうやってついた筋肉が一番美しく太鼓を打つ時に無駄がないんです。
これも音に対するこだわりのひとつですね。

他にも音へのこだわりは、所作の部分にも結びつきます。
例えば一音を大切にする人が演奏の準備でガチャガチャと耳障りな音は出しませんよね。
そういった気遣いが所作に繋がっていきます。

このように音に対するこだわりは、鼓童の様々な場面で現れているかと思います。

音に対するこだわりが、公演や曲作りに繋がっていると。

そうですね。
鼓童は「伝統と革新」を大切にしていますが、
常日頃それをものすごく意識しているわけではなく、
鼓童の芯の部分は「今できる最高の音を出したい」ということです。

最高に良い音を追求するために日々の活動を行い、
そのためには過去から学ばないといけないこともありますし
新しいものも取り入れていかなければなりません。
「道」も過去の歴史を踏まえていますが…
あくまでも目的は、最高の音を表現するということです。

「今できる最高の音を出したい」が、鼓童の芯の部分にあるということがよく分かりました。
ありがとうございました。

和太鼓界の未来とメッセージ

続いて和太鼓界についての質問をさせていただきます。
船橋さんは今後和太鼓界がどのようになっていってほしいですか。

個人的にはまだまだプロの太鼓グループの認知度は低いと感じているので、
もっと太鼓の楽しさが広まり、触れてくれる方が増えてくれると嬉しいですね。
「鼓童で太鼓を演奏してます」と言っても、ほとんどの人は鼓童を認識していないのが現状です。

秋から始まるツアー「巡-MEGURU-」は住吉という鼓童の若手メンバーが演出するのですが、
よく作り込まれた上に、とてもキャッチーで、
ミュージックビデオを作るなど今までの鼓童と違うところに挑戦しています。
彼らのような若いメンバーの活躍にはとても期待しています。

和太鼓をやっている若手奏者はたくさんいます。
彼らに向けて何かアドバイスやメッセージがありましたらお願い致します。

続けることがすごく大事だと思います。
すぐに結果が出るとか、そういうことって何事においても難しいと思うんです。
継続する中で得るものはたくさんありますし、
2、3年で諦めずに楽しむ心を持って続けていくことが大切かなと思います。

最近は物事のスピードがすごく早いですよね。
情報も簡単に手に入るし、調べようと思ったらなんでもすぐに調べられます。
でも、自分の体に入り込んで自分のものになっていく速度はあまり変わっていないはずです。

自分の体にしっかり染み込んでいく作業を楽しみながら継続していくと、
見えてくるものがあるんじゃないかなと思います。

ありがとうございます。
船橋さんは鼓童代表として、今後鼓童でどのようなことをやっていきたいですか。

いろんな国へ行き、多くの方々と出会い楽しく活動することができるのは、
先輩たちの積み重ねのおかげです。
そうしたものを次の世代に引き継いでいくのが僕の責任だと思っています。
だからこそ今回の「道」などの公演を通し歴史をよく学び、
自分なりに解釈しながら創造し、次の世代へ受け渡していきたいです。

ありがとうございました。
最後に、改めて「道」を見にご来場されるお客様にメッセージをお願い致します。

「ドンッ!」と身体で音を感じ、芯の部分、魂が揺り動かされる舞台、
みなさまが元気になれる舞台を作りたいと思っています。
今の鼓童の出せる最高の音を楽しんでいただければと思います。

ありがとうございました。
鼓童代表の船橋裕一郎さんでした。

鼓童特別公演2018「道」について


photo by岡本隆史

さて、そんな世界中をかけまわり活躍する鼓童の
特別公演2018「道」が、6月よりスタート致します!
原点を見て更に躍動する鼓童の道のコメントです。

『道』は、前身の佐渡の國鬼太鼓座時代(1971~81)も含め、約半世紀の歳月をかけて継承したものを基調に構成されます。
鼓童にとって古典ともいえる舞台のなかから「型」を抽出し、鼓童のDNAを次代に継承します。
私達は『道』のような継続性のある公演を通して、新たな創造活動に向けた礎を確かなものにしていきたいと考えます。
私達の奏でる「太鼓」という楽器は、叩けば音が出るというシンプルな楽器です。
しかし、その音や響きは、複雑にして多彩、ひとつとして同じにはなりません。
打つ人間も当然、身体、年齢、背景など、それぞれの個性を有します。そのような楽器、そして様々な打ち手が、日々の鍛錬のなか、
呼吸を合わせ、音を追求し、奏でる音の表現は、言語の壁を超え、人間の本能を揺さぶり、多様化する社会に与える影響は、可能性に満ちています。
私達は、自然の恵みと豊かな歴史を併せ持つ「佐渡」で舞台を創り出し、日本各地、世界各地に太鼓の音を届け、より多くの人々に共感と共鳴の輪を広げて参ります。
演出 船橋裕一郎