Rolandと太鼓芸能集団「鼓童」が長年共同で開発を続けてきた電子和太鼓が、先日のRolandの新作製品発表会 / SOUNDSPARK2020にて正式お披露目となった。発表された電子和太鼓の正式な名前は「TAIKO-1」だ。
今回はこの「TAIKO-1」の特徴と、SOUNDSPARK2020での鼓童の演奏の様子を前編・後編に分けて紹介する。
スマートなボディ、 新しい太鼓の解釈
正式発表された TAIKO-1は非常にスマートなボディとなっており、非常に驚いた。打面に、打面同士を繋ぐ8本のパイプ、そして音源部のユニット。最初に見た人はこれが太鼓なのか?と思うほどにシンプルな構成だ。開発当初のボディと比べ大幅にデザインが変わり、スマートで美しいフォルムに仕上がっている。
2017年に披露された初号機は電子ドラムを二つ使用して和太鼓にしたような形で、2018年の弐号機は担ぎ桶太鼓に寄せたような形となっていた。
▼ 初号機(2017年)
▼ 弐号機(2018年)
個人的にはTAIKO-1のスタイリッシュでミニマルさを感じさせる、シンプルなデザインがとても良いと感じた。世界初の電子担ぎ桶太鼓だからこそ、従来のものに寄せないこの形が、新しいものとしての存在感を感じさせてくれるだろう。
この二つから大きくデザインを変えた今回のTAIKO-1。この形は、これまで手本としてきた桶胴太鼓の型を、ローランド独自の新しいスタイルに発展さ、太鼓文化のさらなる進展に向けたRolandのチャレンジを表している。
▼三世代が並ぶとデザインの変遷が非常に伝わってくる
デザインの変遷については、TAIKO-1の製品ページで更に詳細を知ることができる。どのような思いや考えからデザインが発展していったのかわかるページとなっており、要チェックだ。
TAIKO-1の特徴
TAIKO-1には様々な特徴があり、どれも新しい可能性を感じさせてくれた。その中でも、実物にふれ、素晴らしいと感じた特徴をいくつか紹介する。
● -再現性- 太鼓の音色を再現する打面位置検出
● -静音性- メッシュが実現する打ち心地と静かな打音
● -安定性- 程良い重さが生み出す安定性
● -運搬性- 分解してコンパクトに持ち運べる
● -拡張性- オリジナル音色の作成や、音源と一緒に演奏
– 汎用性 –
豊富なプリセット音源・様々な打法に対応
TAIKO-1で演奏できる音色は実に100にものぼる。これは太鼓以外の音源も含んだ数ではあるが、太鼓に関するものだけでも50は超えていた(発売までにプリセット音源は調整され、太鼓のものは今後更に増える可能性があるとのこと)。
担ぎ桶太鼓 / 桶胴太鼓 / 長胴太鼓 / 締二丁 / 締五丁 / 締並附 / 大太鼓 / 大平太鼓 / 大平桶太鼓 / 団扇太鼓 / 銅鑼 / チャッパ・ジャンガラ/ 掛け声(男女) / 各太鼓の複数人演奏モード
これらのプリセット音源は様々なシーンでの演奏を可能とする。例えば大平太鼓。その大きさなどから個人での所有も難しいが、TAIKO-1の音源を使えばコンパクトに大平太鼓の再現が可能となる。もちろん、打ち方や見せ方を再現することはできないが、従来とは異なる打ち方で、その太鼓の音が鳴るというクロスオーバーは新たな表現の追求を可能にしてくれるだろう。
また、TAIKO-1は様々な打法にも対応しており、その点でも高い汎用性を見せてくれる。通常の担ぎ桶だけでなく、伏せ、座奏などにも対応できる(それぞれに合わせた台などは別途必要)。
足りない部分を補う楽器として、新しいエッセンスとしてなど高い汎用性で様々なシーンで活躍してくれるのではないだろうか。
– 再現性 –
太鼓の音色を再現する打面位置検出
太鼓をはじめとした打楽器では、面の中心から外に向かっていく中で音が変わってくる。その音の違いが音の表現の豊かさを生み出す一つとなっている。TAIKO-1ではこれら打面の位置での音の違いも高い解像度で再現している。
打点位置検出機能を組み込むことで、打面のどの部分を打ったかを検出し、場所に合わせた音を出すことが可能となっている。また、打ち込んだ際のタッチの検出も解像度が高く、非常に弱いタッチから強いタッチまで再現してくれる。これらの機能が実際の太鼓を打った際の音の表現を非常に高いレベル、実物の太鼓に限りなく近いレベルを再現してくれている。
▼小さなクッションにしか見えないが、肝となってるパーツ
また、音のピッチについても調整が可能だ。それぞれの太鼓で曲に合わせた音程があると思うが、TAIKO-1では調整をしっかりすることができる。複数台で演奏する際にはこのピッチを合わせたり、あえてずらすことで音のメリハリをつけ、ダイナミックな演奏をすることができる。
– 静音性 –
メッシュが実現する打ち心地と静かな打音
TAIKO-1の打面にはメッシュが使用されている。打った瞬間にしっかり沈み、反発が返ってくる。これにより、通常の太鼓のような動作がしっかりと行える。そして、このメッシュが生むインパクト時の反発は非常に良く、心地よいものとなっている。もちろん、太鼓ごとによる反発具合まで再現することはできないが、演奏する点においてそれが大きなデメリットになってしまうということはなさそうだと感じた。
また、このメッシュは非常に静音性が高く、室内での個人練習などにも適している。打った瞬間に「サラッ」というような打音があるものの、夜など非常に静かな空間でない限りは音が気になるといったことはなさそうなくらいの静音性だった。
▼後ろが透けるメッシュ、この薄さで静音性と機能性を備えているのはすごい
– 安定性 –
程良い重さと絶妙な形が生み出す安定性
TAIKO-1の重さは4.5kg、実際の担ぎ桶に近い重さとなっている。この適度な重さが打った際の安定感を生んでいた。
電子なのだからもっと軽い方が良いのでは?と思う方もいるかもしれない。しかし軽すぎると打ち込んだ際に太鼓そのものがグラついてしまったりする可能性がある。小さなグラつきであれば、続けて打つ際のポイントのズレを生んでしまうし、大きなグラつきだと太鼓が転倒して怪我に繋がる恐れがある。その為、この4.5kgという重さが、担いで負担のない重さかつ、絶妙な安定感を生み出している。
また、TAIKO-1のパイプユニットの形も安定性を生む大きな役割を果たしている。パイプの若干の曲がりと窪みが、担いだ時に体に程よくフィットしてくれる。体に入り込みすぎず、飛び出しすぎない絶妙な角度になっていて安定感を与えてくれていた。歩いたりアクションをしても、太鼓がしっかりとついてくるのは素晴らしい。
また、この絶妙な曲がりは伏せで置いた時の衝撃緩和にも貢献しているのではないかと思う。パイプが打面に対して垂直だった場合、地面に対しても垂直になるので、衝撃が直接かかりパイプ部や結合部への負担がかかり、消耗が激しくなりそうだ。窪みや、打面に対して曲がっていることで、地面に対しても衝撃がスライドするように入り、衝撃を和らげてくれそうだ(足を垂直に地面に下ろした時と、角度をつけて下ろした時の衝撃の違いをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれない)
-運搬性-
分解してコンパクトに持ち運べる
TAIKO-1の特徴の中でも個人的に惹かれたのはその運搬性の高さだ。4.5kgという重さも運搬する上で運べる重さだが、何よりもこのTAIKO-1は分解することが可能なのだ。打面と音源ユニット、打面を繋ぐパイプユニットと分解することができる。これにより、非常にコンパクトな持ち運びが可能となる。
これだけコンパクトになると、他の楽器と一緒に持ち運ぶことや、車などに積み込むことも楽になる。細かく分解して持ち運べるのは電子ならではの特徴だ。画像を見ればわかるコンパクトさに、これ以上の説明は不要だろう。
– 拡張性 –
オリジナル音色の作成や、音源と一緒に演奏
TAIKO-1にはUSBのジャックがついており、オリジナルの音を取り込んで新しい音色を作ることが可能だ。プリセットの太鼓が豊富とはいえ、団体であれば自分の所で使用している太鼓に近い音を使いたい。そういった場合に、自分の所の太鼓の音を取り込み、演奏することで、一体感のある演奏が可能となるだろう。ある程度の技術や音楽に関する知識や、録音する環境などが必要になるが、こういった機能が提供されていることで使用者の幅が広がるのはとてもありがたいことだ。
また、Bluetooth機能でスマートフォンなどの音源を流しながら練習することも可能だ。好きな太鼓アーティストの曲を練習する際、太鼓の曲を練習する時、太鼓以外の楽器とセッションする為の練習など、様々な場面で活躍してくれる機能だ。
その他にも、フットペダルが接続できるジャックがあったりと、色々な拡張機能が用意されている。拡張機能を使いこなすことでTAIKO-1は使用者一人一人に最適化された楽器になっていくだろう。
他にも様々な特徴がある
今紹介した特徴以外にもTAIKO-1には様々な特徴がある。TAIKO-1のサイトではこれら以外にも解説があるので、ぜひアクセスしてその特徴を感じて欲しい。
後編はこちら!!
TAIKO-1へ感じたじことと、同日開催されたSOUNDSPARK2020での鼓童のパフォーマンスの様子をお届けする後編はこちら!!
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