前編に引き続き、Rolandと太鼓芸能集団「鼓童」が長年共同で開発を続けてきた電子和太鼓「TAIKO-1」を紹介!後編では、TAIKO-1に感じた可能性や課題、SOUNDSPARK 2020での鼓童さんの演奏の様子、TAIKO-1から見えた未来を紹介します!!
前編「TAIKO-1の特徴」についてはこちら
TAIKO-1に感じる可能性
TAIKO-1を試奏して感じた一番の可能性は、とても楽しいということだ。表現の幅が広がる楽しさ、どこでも気軽にできる楽しさ、誰でも叩ける楽しさ。これらの可能性をとても感じることができた。
表現の幅が広がる楽しさ
TAIKO-1に感じたのはやはり、表現の幅が広がるという点だ。一つの和太鼓で様々なな音の出すことができるということで、様々な曲への導入が行えるだろう。また、面と縁にそれぞれ音をセットすることが可能なので、両面で合計4種類の音を出すことが可能となる。長胴太鼓と鳴り物、大太鼓と締め太鼓、こんな組み合わせも可能だ。
今までできなかった表現にもチャレンジできることは、とても楽しいなと感じた。
どこでも気軽にできる楽しさ
静音性が高いメッシュと分解して持ち運びのできる運搬性による、どこでも気軽に演奏・練習できる点にも可能性を感じる。
現状、太鼓の演奏がNGといったホールも多い。これは、音の大きさもあるのだが、太鼓の振動による所もある。TAIKO-1自体は響かず、PAでの調整となるので、この問題をクリアすることが可能だ。これにより、今まで太鼓を叩くことができなかった場所での演奏や、コラボも可能になるだろう。
また、アマチュア間で開催される和楽器交流イベントなどでも和太鼓はNGという所も多かったが、このTAIKO-1ならOKが出るかもしれない。
このように、これまで演奏・練習できなかった場所でも楽しめるようになるのはとても素晴らしいことだ。
誰でも叩ける楽しさ
TAIKO-1のメッシュは非常にタッチがよく、誰でも簡単に叩くことが可能だ。この可能性も素晴らしいものだと思う。太鼓で良い音、美しい音を出そうとすると、磨いてきた技術や筋力、体力といったものがある程度必要になってくる。しかし、TAIKO-1においては、それらはあまり重要な要素ではない。音の大小やピッチを調整可能で、鼓童によってサンプリングされた太鼓を音を誰でも鳴らすことができるからだ。
子供やお年寄り、身体を使うのが苦手といった人でも簡単に良い音を出すことができるし、自分の鳴らしたい音がしっかりと出る。
これには素晴らしい可能性を感じた。太鼓というものがより多くの方に楽しんでもらえるきっかけに大いに貢献してくれるだろう。
これらの他にも、レコーディング楽器としての可能性なども感じた。販売され、普及していくと思いも寄らなかった使い方など、たくさんの可能性が見られると思うとワクワクする。
TAIKO-1の課題
TAIKO-1には可能性を非常に感じたが、もちろん課題となる点も試奏して感じることができた。今回はミュート、電池の持ち、何で打つか、耐久性、といった部分に課題を感じた。
ミュート
現状のTAIKO-1ではミュート機能が付いていない。その為、ミュートして太鼓を打ったり、打った音を打面を触って抑えるといった奏法は行うことができない。太鼓においてはそこまで多くはない奏法なので、使用頻度は低いだろう。しかし、鳴り物などの音が入っているので、ミュートで音を止められない点に関しては勿体無いなと感じた。
開発担当者の方に聞いたところ、縁を触ることで音を止めたりすることは今後できるようになるかもしれないとのことなので、音を止めるミュートに関しては解決できる可能性が高い。
RolandのV-Drumsの最新版では、スマートフォンと同様のセンサーも取り入れられており、触ったことを検知し、ミュートでの奏法が可能だった。今後の発展型ではこれらを取り入れたものも出てくるかもしれない。
電池の持ち
TAIKO-1は単3形充電式ニッケル水素電池8本で約5時間の駆動が可能だ。思っていたよりは電池を使うなという感想だ。
太鼓の演奏となると、1回1時間、日に数回の演奏といったものもアマチュアでも十分にある。5時間の駆動なら切れることはないかもしれないが、途中で充電をしておくか、予備の電池を準備しておくなどの備えをしておいた方が良いだろう。
電池が切れる可能性を頭に入れつつ行動し、演奏途中で音が出なくなるといったことにならないよう避ける必要がある。個人的にはあと1時間くらい駆動があると安心できたかもしれない。
耐久性
今回の電子和太鼓という取り組みは、Rolandにとっても初の試みとのことで、耐久性については一部読めない部分もあるとのこと。
太鼓の撥を使って打った場合、メッシュ素材やフチの部分がどれくらい持つのだろうか。もちろん使用頻度によって変わってくる話ではあるが、太鼓の打ち方を考えると消耗は速そうに感じる。明確に壊れなかったとしても、センサー部の反応が悪くなったりしてしまうと演奏に支障がでてしまう。この耐久性という面は少し不安でもある。
不安といっても、電子楽器に精通した会社が作成するのでそこまでの心配はいらないだろう。もちろん故障した場合はRolandがしっかりとサポートしてくれるという部分では安心できる。
いつ壊れるか分からないというのは実際の和太鼓でも同様ではあるので、そこまでドキドキしながら使う必要はないが、耐久性はどのくらいなのかという未知数の部分が少し気になるものではある。
課題 = 今後の伸び代
実際に試奏して感じた課題をいくつか挙げた。かなり作り込まれている為、十分に検討した結果の部分で、辛口な課題なのかもしれない。しかしこれらの課題が解決されると、一人のユーザーとしても非常にありがたいなと感じた。
そしてこれらの課題は、今後のアップデートや改良版で改善される可能性は大いにあるだろう。初の試みということで、想像していなかった課題はおそらく色々と出てくるだろう。しかし、それらを解決することでより良い電子和太鼓にTAIKO-1は成長していくだろう。
気になる点があるというユーザーにこそ、実際使ってもらい、その意見を挙げていってもらうのが良いだろう。
SOUNDSPARK 2020
この日は新製品の試奏だけでなく、SOUNDSPARK 2020でのパフォーマンスも披露された。新しいV-Drumsシリーズをドラマーの松浦千昇さん、そうる透さんが、TAIKO-1を太鼓芸能集団「鼓童」が使用したパフォーマンスが披露された。
V-Drumsの松浦千昇さん、そうる透さんのパフォーマンスでは、電子ドラムとは思えない音や迫力、様々な音色でのパフォーマンスだった。実際のドラムと同じ奏法を可能としており、これからのレコーディングやライブなど、様々な場所で演奏を盛り上げていってくれる可能性を感じることができた。
そしてTAIKO-1を使った鼓童のパフォーマンスは、今までの太鼓や曲が新しい解釈で再構築された素晴らしいものだった。試奏ではなく、ステージ上で披露される演奏によって、実際にTAIKO-1をステージで使った際の雰囲気がとてもわかるものだった。
タッチの良さを実感
小さな音から大きな音、細かなリズムなど、本当に粒がしっかりと立って聞こえてくるのが分かる。聞かせたい音をしっかりと届けてくれるのはとてもありがたい。特に小さな音や細かな音を届けてくれるのは太鼓打ちにはとても嬉しいだろう。
太鼓を超えたMIXにワクワク
電子和太鼓だからこそ、太鼓ではなく音源を取り入れたMIXはやはり可能性を感じさせてくれる。試奏で1台だけで打った時よりも、やはり演奏の方が何十倍もワクワクさせてくれる。こういったMIXが可能になることで、他の楽器とのセッションなど、これまでにない可能性の道を更に示してくれるのではないだろうか。TAIKO-1が販売され、どのようなことに活用されていくのか、とても楽しみだ。
新しい解釈での再構築
この日は鼓童さんの曲がTAIKO-1を通して新しい解釈で再構築された。担ぎ桶スタイルや、伏せのスタイルなのに大太鼓の音がしたり、鳴り物の音がしたりと、今までの概念やイメージをガラッと変えてくれる。いかにこの太鼓はこの音、といったイメージにとらわれていたかが分かる。具体的にいうと、太鼓の音は太鼓によって決まっているが、担ぎ桶が桶だけにこだわる必要はないということなどを教えてくれた。
このTAIKO-1によって、これまでにあった曲が新しい構成で演奏されることで更に表現の幅が広がっていくのではないだろうか。それはTAIKO-1のみでの演奏といった意味ではなく、リアルと電子が交わる新しいカタチなどでも面白そうだ。
まとめ:TAIKO-1から見えた新しい未来
今回の新作発表会とSOUNDSPARK 2020で正式なお披露目となったTAIKO-1、一見すると太鼓らしくない見た目の電子楽器から太鼓の可能性を体感させてもらった。
楽しいという楽器の根底にあるものだけでなく、しっかりとパフォーマンスにも導入していくことができるクオリティは、今後のパフォーマンスの世界で大きく活躍していってくれる、そんな光も感じることができた。
TAIKO-1、販売は2020年の夏を予定しており、公式サイトより最新情報を受け取ることが可能だ。気になった方はぜひ、登録してTAIKO-1の最新情報をゲットしよう!!
前編「TAIKO-1の特徴」についてはこちら
Photo TAIKO-1
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