楽器を数値化し、最高の品質を誰にでも届けられるようにする。そんなロマン溢れる楽器があります。その名前は「AireedX」、金属製の尺八です。
金属製の尺八と書くとそれだけで完結してしまいそうな言葉ですが、AireedXにはそれだけで完結しない様々な技術やロマンが詰まっています。今回はそんなAireedXについて紹介します。
AireedXとは
AireedXは泉州尺八工房のオーナーで遠TONE音(尺八、箏、ギター)のリーダーである三塚幸彦が開発・プロモートし、エアリードエクスパティーズ合同会社が製造・販売する、尺八という楽器の構造や響きを数値化し、尺八製造技術と金属加工技術の粋を集めた最高級かつ究極の尺八とも呼べる楽器です。
泉州尺八工房と言えば、尺八の世界では憧れの名だたる工房に挙げられます。その泉州尺八工房のオーナーである三塚さんのこれまでの技術がすべて込められた尺八こそ、このAireedXなんです。
AireedXのコンセプト
現在ほとんどの尺八といえば竹でできていますが、なぜ金属製の尺八を作ったのか、そこにはAireedX製作のコンセプトがありました。
そのコンセプトとは「製品によるばらつきのない均質な性能の尺八楽器」です。
尺八は竹という一本一本がそれぞれが異なる素材で作られています。そのため、尺八ごとに様々な表情を見せてくれます。それこそが尺八という楽器の面白い点であると同時に、合奏などでの難しい点でもあります。
それは時に個性とも呼ばれますが、個人の個性ではなく尺八の個性になってしまうこともあります。AireedXでは最高の品質をバラツキなく届けることで、尺八の個性という面ではなく、演奏者自身の個性を引き出したいという想いが込められています。
そして最高の品質を追求することで、演奏者の求める音色や様々な表現を可能にし、尺八を「民族楽器にとどまらず、高性能な “楽器” として、世界のあらゆる音楽シーンで使用されることを目指す」というコンセプトも込められています。
AireedXの特徴
尺八製造技術と金属加工技術の粋を集めた最高級の尺八「AireedX」その特徴の一部分を今回紹介します。
幾千の試行の果てに”数値化された尺八”
最初に語るべき一番の特徴は、尺八という楽器の構造を数値化し、金属加工に落とし込んだという点です。
通常の尺八作成では、大きさや指穴の位置、内径の設計図はあれど、細かな部分までの設計図はありません。それは使用する竹に同じものはなく、一つ一つ竹の太さや癖に合わせた調整が必要になってくる為です。この細かな調整こそ職人の技術の見せ所であり、何千と繰り返し磨いた技により微小な感覚の違いを感じ、調整し、最高の一本に仕上げていきます。
しかし、金属加工する際は頭の中にある設計図を実在する設計図にする必要があります。感覚として捉えていた微小な違いも数値化し設計図起こす、その作業がどんなに困難で大変か…AireedXではその困難を超え、微小の違い、泉州尺八工房の持つ最高の音のメカニズムが数値化されています。
数値化、と言葉でいうのは簡単ですが、製品になるまでには何百何千と試行錯誤を繰り返してきたそうです。ブレのない最高品質の尺八をいつでも届けたいという思いに始まり、3Dプリンタで何度も成型しては微調整しという作業を繰り替えし、大枠となる型が作られました。それをもとに金属加工を依頼し、さらに細かなブレやズレなど、加工する職人も参ってしまうような細かな調整の果てにAireedXという製品が誕生したのです。
この数値化した尺八こそ、AireedXの一番の特徴です。どの製品にもブレがなく、同じメカニズムで均一化して作られた尺八は、尺八自体の個性ではなく演奏者の持つ個性を引き出してくれます。
▼左から3Dプリンタで試作した尺八 / プロトタイプのAireedX / AireedX
▼左が加工後、右が加工前のもの。歌口一つでも設計図が必要になります。
熟練された工房だからこその”最高の音”
数値化された尺八、数値化された構造が出す尺八。音ももちろん一級品です。金属で作られた尺八なんて尺八ではない、という声も聞きますが、AireedXの音を聞くと「これは尺八である。」と誰もが納得してしまうほど、素晴らしく最高級の音です。
まずはデモ演奏動画でAireedXの音をぜひ聴いてみてください。
いかがでしょうか。尺八の音そのものだと私は思いました。これは、長年に渡り尺八界を牽引する素晴らしい尺八を作ってきた泉州尺八工房の音だからこそ実現できた音だと思います。研究を重ね、尺八と向き合い続けてきたその結晶とも呼べる音です。
こだわり抜かれた”美しいフォルム”
つい触りたくなる、手に取りたくなるというのは楽器として非常に大切な要素です。AireedXは外観にもこだわられており、いつまでも触っていたい、吹いていたいと思わせる美しさがあります。
金属製ではあるものの、非常に滑らかで美しい曲線を描いたフォルムになっています。このフォルムこそが美しさの秘訣です。金属加工の技術は数値化された構造だけでなく、外観にも現れていました。
写真の一番右にある銀色の管は、AireedXの位置ごとでの太さを表した状態のものです。位置ごとに段差があり、かなり絞られているのがわかります。一方で隣に並んでいる製品版のAireedXではこれらの段差はありません。一目見ると銀色のものより太く見えます。しかし、実際この二つの位置ごとでの太さは一緒なのです。
え?と驚く方もいるかもしれません。最初にそう言われた時ビックリしました。製品版では歌口から絞られているなという感じはするもののそこまで細い感じはしませんでした。この一目ではわからないほどに滑らかに絞られてる加工技術こそが美しさを生み出しています。
実際に、近づいたり斜めから見ると太さが一緒だということが大分わかりやすくなります。これほどの位置の違いを滑らかに加工するということ、その技術力の高さに脱帽です。
▼歌口や管尻が描くフォルム、これは息を飲む美しさです
4分割でコンパクトになる高い携帯性
AireedXは4分割し、専用ケースに収納することが可能です。
通常の尺八は2分割で、分割後も約30cm程度の長さがあります。分割した尺八をカバンやケースなどはその長さに合わせてそれなりの大きさが必要になります。それに比べるとAireedXは専用のケースに入れると15~20cm程度とかなりコンパクトな大きさになります。ケース自体の強度もあり、耐久性という面でも安心できます。
スッとカバンに入れられる携帯性の高さは、ちょっと今日練習したいな、どこかで披露する機会があるかもしれないから持っていきたいという時に重宝しそうです。
ケースにしまっていると、尺八が入っているようには思えませんね。
しかし、ケースを開けるとしっかりとAireedXが収納されています。
また、2020年3月31日までの先行予約にはこちらの赤いケースが付属してきます。こちらはまた豪華な雰囲気を出してくれます。
触れて感じた、ココがポイント!!
ここまでAireedXの特徴を紹介してきました。こだわり抜かれた製品であることが感じてもらえたのではないかと思います。ここからは、泉州尺八工房さんにお邪魔し、実際にAireedXに触れたなかでも「特にここが素晴らしい」というポイントを紹介します。
パーツ同士がスーッとハマる気持ちの良さ
尺八は管をはめるのは結構一苦労な作業です。気温や湿度によってもはまりやすさはかわってきますし、無理にはめたり、外したりすれば壊れる原因ともなります。
AireedXはその「はめる」「外す」という作業が「スーッ」とできてしまうのです。言葉では伝えづらいのですが、本当に「スーッ」というより「スーーーーーッ」「ピタッ」という感じです。はめるときは少し捻りながらはめ、外す時も少し捻りながら外します。この際ほとんど力はいりません。これだけ。
金属と金属をくっつけているのにありえないくらいのヌルッとした感じではまる、外れるのです。もちろん接合部には他のパーツは使用しておらず、管と管だけです。
そして何よりすごいのは、こんなにもスーーッとはまるのに、くっついている状態の管と管を引っ張っても抜けないんです。ひねることでは抜けるのに、引っ張ると抜けない、この感覚がとてもすごく、なんども試してしまいました。
これはミクロン単位で調整しているからこそ可能なことだそうで、この技術は金属加工の方が見ると驚くほどのものだそうです。
指穴の向きを調整可能
AireedXの非常に良い点として、指穴の向きを調整することができます。どういうことかと言うと、管をひねり、自分の手や指の大きさに合わせた位置にひねることが可能と言うことです。
2尺などの長い管だと、指穴がまっすぐではない位置に空いています。それをAireedXでは再現可能です。たとえ指穴の位置を変えるために管をひねっても内径の構造が崩れることはなく、音の品質も保たれるとのこと。これが非常にすごいなと思いました。
今後は各指穴ことに向きを変えられるようにできたらとも伺ったので、ドンドン進化していきそうです。
素晴らしい点は特徴で紹介してしまいましたが、特徴以外にも特によかった点を紹介しました。AireedXにはその他にも様々なポイントが詰まっていましたので、公式サイトもご覧ください。
試奏動画を紹介
AireedXはプロの世界で活躍する奏者に方も試し、その動画がアップされています。様々なシーンで活躍する未来を垣間見ることができる動画をぜひお楽しみください。
AireedXにはロマンが詰まっている
製品コンセプトから特徴、実際に触ってみて、AireedXにはロマンが詰まっているなと感じました。そのロマンは一つではなく、尺八職人としてのロマン、金属加工技術のロマン、演奏のロマンと様々な方のロマンが凝縮されています。
褒めすぎなのでは?と思う方もいるかもしれません。実際に私も実物を見て、触るまではどこか「金属製の尺八ってどんなものなんだろう」という思いもどこかありました。
でも、実際に見て、触れると、色々な方の努力を感じ、とてもワクワクする楽器であり、ロマンや未来が詰まっていると実感することができました。
値段は約40万円と決して安くはないかもしれません。ですが、長年付き合っていくと考えた時、それだけの価値がある、多くの技術の結晶と言える尺八です。2020年3月31日まではプレミアム事前予約も開催されているので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
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