東京の伝統芸「江戸木遣り」と、「女木遣り」の復活への道

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日本の粋と風流を歌う三味線シンガーソングライター・なつみゆずです。

海外向けに日本の文化を紹介したり、日本の伝統楽器・三味線でオリジナル曲を弾き語りしたりする活動をしています。

 

私のライブでは基本的にポップスを歌っていることが多いのですが、日本文化の伝承にもきちんと関わりたいと思い、3年ほど前に日本火消し保存会という団体に所属しました。ここでは東京の伝統芸能「江戸木遣り(えどきやり)」の保存活動をしています。

今日は江戸木遣りの保存活動と、江戸時代に密かに存在した「女木遣り」を復活させるプロジェクトについて、ご紹介したいと思います!

 

 

「木遣り(きやり)」って何?

この活動を始めてから、「木遣りって何?」との質問をいただくことが多くなりました。

木遣り」、皆さんは聞いたことはありますか?

江戸の伝統芸ですが後継者が少なく、今では日本人でも知らない人が大半。でも実は、私たちの生活に密接に結びついた音楽なんですよ!もしかしたら、日常の中で聞いたことがあるかも……?

 

 

東京の伝統音楽・江戸木遣り

江戸木遣りは、江戸時代の火消し(鳶職)が歌い継いできた労働歌。

楽器は使わず、1人の「兄木遣り」と、大勢の「弟木遣り」の掛け合いで歌を繋いでいきます。西洋のオペラのソリストとコーラスに近いですが、木遣りは決まった音程や和音が無く、「歌」というよりは「掛け声」に近いイメージです。

 

もともと仕事の掛け声だったものが、芸能として洗練され、儀式などで歌う祝儀歌に発展。江戸時代末期には結婚式や上棟式、お葬式などで庶民の間でも歌われるようになりました。

現在はお祭りの神輿の先導や、消防の出初式などで歌われています。

 

1分でわかる木遣りの歴史

なぜ鳶職(建設業)=火消し(消防) なの?

江戸時代の東京は、木造住宅が密集した街で、火事が日常的に起こっていました。「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉が有名ですが、そのくらい頻繁に火災が起きていたんですね。

江戸時代は今のように、消防車や消火栓などという設備はありません。

火事が起こった場合は火元の周りの家を壊し、延焼を防止する破壊消防が行われていました。

 

家の壊し方を知っている人=家を建てた人=建設業(鳶職)

 

ということで、江戸の町では鳶職と火消しが同義になっていったそうです。

 

彼らのような町人による消防組織を町火消し(まちびけし)といい、町人のボランティアによって成り立っていました。現在の消防団と同じですが、江戸時代は火事が起きれば消火は命がけ。家族と街を守るため、死と隣り合わせで戦っていたのです。

 

 

現代では東京各地のお祭りなどで唄われている

科学技術が発展した現在では、街の消防団が命がけで消化活動にあたることは無くなりました。

木遣りも徐々に、火災現場や建築現場の掛け声から芸能としての側面が強くなり、専らお祭りや結婚式などで歌われています。

浅草の三社祭、神田明神の神田祭などで、現代でも生粋の江戸っ子たちの木遣りを聴くことができますよ!

 

また木遣りは東京だけのものではなく、全国各地にご当地の木遣りがあります!皆さんの地元でも唄われているかもしれません。

 

 

令和に復活する「女木遣り」

さてこの「江戸木遣り」の保存普及活動をする日本火消し保存会で、私たちがやっていることですが、江戸時代に唄われていたという「女木遣り」(おんなきやり)の復興に取り組んでいます。

 

↑2020年1月の舞台の様子。

 

女木遣り復活への道

最近まで女人禁制だった木遣り界

大相撲の土俵の女人禁制問題が取り沙汰されたのは記憶に新しいですが、木遣りも相撲同様、長らく女人禁制とされ、数年前まで女は唄うことができませんでした。

 

ただ、江戸時代の記録によると、どうやら逆に女だけが唄っていた木遣り唄が存在したそうなのです。

 

それは吉原(遊郭として有名ですが、芸事の街でもあり、芸者さんたちが舞踊や楽器の練習に励んでいた)の芸者衆の間で唄われていたもので、男の木遣り唄をもじったお座敷芸だった模様です。

実は20年ほど前まで、芸者さんの間では唄われていたようですが、近年は表立って唄われることも無くなり途絶えてしまったそうです。

 

この「女木遣り」を復活させるべく、2017年に日本火消し保存会が新設したのが、「女木遣り組」(おんなきやりぐみ)です。

 

 

さまざまなジャンルの伝統音楽から、江戸の女木遣りを推測する

このような経緯で始まった女木遣り組ですが、最初は苦労の連続。なぜなら……

 

資料が無いんです!

 

途絶えて久しい女木遣り。あるのは江戸時代の資料と、20年前の芸者さんたちによる録音のみ…… 。長唄(江戸の伝統的な三味線音楽)や民謡の専門家が集まり、それらの歌い方に残る技法や発音から、江戸時代の歌い方を推測しました。

 

令和の新しい芸能

女人禁制を女性蔑視と捉えるか、伝統文化として保存するか・・・非常に難しい問題です。前述の相撲や、歌舞伎や能も役者は男という伝統があり、それを安易に崩して良いものか議論になるのは当然だと思います。

 

だから自分が女の立場から「それは差別だ!」と声を上げる気は無いのですが、ただこのグローバル化する世界の流れとして「今は女人禁制とかいう時代じゃない、男女平等であるべきだよね?」という潮流が来ているのは事実。伝統だからと拒み続けるだけでは、やがて伝統文化自体が前時代的な、過去のものとして忘れ去られると思うのです。

 

「木遣り」という伝統文化を知っている人が日本人の中でも少数派、という事実がそれを物語っていると思うんですよね。

 

伝統文化にもアップデートが必要!

伝統芸能の側面をもちつつ、令和の新しい日本文化として「女木遣り」を唄い継いでいきたいと思っています。

 

 

参考ウェブサイト

日本火消し保存会 公式ウェブサイト http://www.nihonhikeshihozonkai.org/hikeshi/index.html

 

 

杉並区立杉森中学校 阿部みどり先生によるレポート

https://www.tokyo-np.co.jp/event/kyoiku/result/20/06.pdf 

(江戸の伝統芸能・木遣りを、東京の学校教育の中で子どもたちに伝承するため、日本火消し保存会に研究にいらっしゃった先生です! とてもわかりやすくまとめられていますので、ぜひご覧ください。)

 

 

この記事を書いた人
なつみ ゆず

「日本の粋と風流」を歌うシンガーソングライター。1月18日生まれ、富山県出身。お茶の水女子大学文教育学部英文科卒。

これまでに5回渡米し、2ヶ月間のアメリカ三味線ツアーを決行する。現在は海外向けに日本文化を紹介する活動をしており、世界9カ国で公演を行う。

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