アクリル糸巻きの新色開発 #1「調色と試染」

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こんにちは、和楽器メディアです!!

先日、糸巻きをクリアに戻すという記事を公開しましたが、その糸巻きも使って今新しいアクリル糸巻きのカラーを開発中です。本日は開発中の糸巻きと、その様子について解説します。

 

▼ 糸巻きを透明に戻した時のお話はこちら!!

カラーアクリル糸巻きを透明に戻してみた!!
こんにちは、和楽器メディアです!! 和楽器メディアでは2021年から和楽器...

 

そもそも糸巻きってどうやって染めているの?

透明のアクリル糸巻きは色々なカラーがあります。鮮やかな色が特徴的なのですが、そもそもこちらの糸巻きってどう染めているかご存知でしょうか?

レギュラー11色 + 和楽器メディア限定エメラルドグリーン(右から5個目)

色をつけるというと、スプレーや筆塗りで色をつけているのかな?と思う方もいらっしゃるかと思います。もちろん透明の素材にスプレーなどで色をつけるものをあるのですが、アクリル糸巻きの場合は異なります。アクリル糸巻きの染色では、樹脂用染料を使用しています。

 

樹脂用染料はアクリル素材やナイロンなどの素材を染めることが可能で、スプレーのように塗布するのではなく、染料液を温めて素材を温めた染料液の中に浸して染色していきます。

温めた染色液に糸巻きを浸す様子

 

糸巻きの色について

現状販売されている糸巻きの色は、樹脂用染料の原色を利用して染めています。樹脂用染料は混ぜることも可能で、それにより様々な色を作ることができると言われています。しかし、絵の具などと違い、染色液自体が濃く、出来上がりの色は染めてみないと分からない、同じ染色液でも染める時間によって濃淡が変わることから調色して作成するのは非常に難しいものとなっています。

 

最初の新色開発

和楽器メディア限定色の開発そのものは2度目となっています。1度目は2021年で、その際はエメラルドグリーンをラインナップにのせることができました。

エメラルドグリーン、左から「素六」「螺旋」「クリスタルカット」

この時も調色については中々に困難を極めました。イメージした色が出ない、色が安定しないなど、思ったように色が出ませんでした。最終的にはちょうどエメラルドグリーンの染色液を作成できた会社があり、同色が引き続き作れないとのことで廃盤にはなるものの数量限定で染色液を分けていただき、それで染めた色が必要だった色だったので、その染色液を使用して販売することができました。

自分で思った色を出すことはできなかったものの、この時学んだ染料や染色の知識は2度目の開発で大いに役に立ってくれました。

 

今回の色は「ブルー系」を開発!!

2度目の開発ではブルー系で「ターコイズブルー」関連の色を開発しています。ターコイズブルーは青を緑の中間色で、染色液の配合を間違えるとエメラルドグリーンになってしまう難しい色でもあります。

しかしながら鮮やかなターコイズブルー系の開発は兼ねてからの願いの為、頑張って開発していきたいと思います!!

 

ブルー系は現状のラインナップだと「青」と「青紫」しかない為、この開発の中で他の青系の色についても模索できればという感じです。

 

新色開発、なかなか難しい

まずは調色をするのですが、先ほど書いたように染色液から出来上がりの色を確認するのはほぼ不可能な為、試染してみてどの配合が良いかを一つずつ確認していきます。試染についても最初から糸巻きを使用するとコストが非常にかかるので、アクリル棒や糸巻きの端材を使用して色を確認しています。

試染の様子、形状によって反射などで色味も違く見える

素材はもちろん、形状によっても色味が違って見えます。鮮やかに見えるアクリル棒は丸型で、若干中で屈折しているような状態になっているので、反射して明るく見えます。しかし、端材で見るとそこまで鮮やかではありません。(磨いていないというのもありますが)実際は糸巻きを染めるので、角棒や端材の色を見つつ確認していきます。

色々な調色をしていますが、ほんの数滴の違いで色が青になってしまったり、緑になってしまったりと非常に難しい作業であると改めて実感しました。

 

いい感じの色がみつかったら糸巻きで試す

調色を進めていき、いい感じの色が見つかったので、糸巻きに実際に染めて試してみます。アクリル棒や端材とは異なり、糸巻きは限りがあるので非常に緊張します笑

染める最中も時々引き上げて色を確認していきます。光に翳したり暗いところで見たり、紙の上においたりと、様々な場面での確認をして、色がどう見えるかをチェックします。

 

そうして染め上げた色がこちらになります。

紙の上においているのもありますが、結構いい感じの色が染まりました。しかし、染めると染料がアクリルの表面を溶かして色がつく為、微細な傷や艶落ちがなくなる為、これで終わりではなく、最後に染料を落とさないように磨いていきます。

磨き直すと以下のような感じになります。艶が増しました!!

青系はカメラでも調整しづらいものなので、磨き前と後で色味が統一できていなくて、、、すみません。どちらも若干緑が入っているような水色のターコイズブルーという感じです。

そして、実際に糸巻きを取り付けてみるとこんな感じになります。

やはり直接紙の上などにおいていないと薄い色に見えますね。近くで見る分には悪くないのですが、舞台など遠くから見ると色が分かりづらい感じもします。

これはこれで綺麗なのですが、色の方向性は悪くないものの、もう少し調整が必要そうです。

 

次回は新品の糸巻きも染めてみます!!

今回は再利用した糸巻きを試染してみました!!改善点はあるものの、色の方向性は定まったのではないかなと思います。

次回は実際に新品の糸巻きを使って染めて、より製品に近い状態になる形での試作を行っていきます。次回の更新もお楽しみに!!

 

やってみたい、という人の為のHOW TO

自分もやってみたい!!という人もいると思うのでHOW TOをまとめましたので参考にしてください

■ 準備するもの

いらなくなったものなど食用とは別で専用に準備してください。大きさは特にどのようなものでも問題なし。100円ショップでも購入可。

 

ビーカー

必須ではないですが、鍋に直接染料を入れると量が必要になるので、耐熱のガラス製のビーカーなどを使用するのがおすすめです(プラスチック製だと色が付いてしまうのでガラス製)。

染料はだいたいの場合で20倍に薄めるものが多い為、300mlは入る大きさが良いかと思います。染色液10ml、水190mlを入れたあと、糸巻きをつける為、つけてもこぼれないような深さが必要。

また、高さが浅いものだと糸巻きが望んだ部分まで染められない場合があるので注意が必要です。ガラス製の入れものであれば、100円ショップで購入できます。

 

ガスコンロ / IHコンロ

キッチンなどでも良いですが、換気しやすい、あるいは外の方が良いので、持ち運べるタイプがおすすめです。使用する鍋に合っているものであればなんでも問題ありません。

 

アクリル棒

試しに染める為のアクリル棒です。一発勝負、という方は必須ではないですが、失敗しない為にも合った方がいいでしょう。ただ、糸巻きの素材とは異なる場合が多いので、若干色の差が出ることには注意してください。

今回私は、タケダのアクリル角棒、丸棒それぞれ5mmのものを使用しました。理由としては、糸巻きに近い太さのものだと高くなり、試染のコストがかかるというものです。使う際も半分くらいのサイズに切って使用するので、それなりに量が確保できる、という点もありがたいです。

 

温度計

必須ではないですが、染色液は温度が低すぎても高すぎても良くないので、一定に保つ為にはあった方が良いかと思います。(リンクのものは私も実際に使用しています)

 

スポイト

こちらも必須ではないですが、染色液の調合を正確に行った方が品質が安定しますので、使うことをオススメします。ガラス製でも良いのですが、ガラス製だと、他の色を混ぜる際に一度洗う必要がある為、使い捨てタイプを使った方が楽かなと思います。

 

アクリル染料

染料についてはSDN染料というものがあります。リンクでは青ですが、他にも原色カラーの糸巻き(エメラルドグリーン除く)と同じカラーのものが展開されています。原色以外は自分で調合して作ることになります。

 

■ 染め方

染める際は換気を十分に行いながら実施し、揮発したアクリル染料を吸い込まないよう風上に立ち、マスクなどをする、手袋などをするようにしてください。また、鍋の水などで火傷をしたりしないようにも気をつけてください。

  1. 鍋に水を張る(直接染料を鍋に入れる場合は不要)
  2. 染色液をビーカーに準備する。アクリル染料に濃度などについて買いてあるので、従って染色液を作る。(直接染料を鍋に入れる場合は不要)
  3. 染色液を温めていく。温める温度は、だいたい70-80度くらいですが、染色液によって異なるので、必ず確認してください。ビーカーで湯煎する場合は、鍋が沸騰してくるとビーカーが倒れるおそれがあるので注意して下さい。
  4. 染色に必要な温度まで温まったら染めたいものをつける。つける時間により色の濃淡が変わるので、適宜引き上げながら確認して下さい。また、染めている最中は時折混ぜながらやると出来上がり時のムラが少なくなります。
  5. 染め終わったら水でよく洗い流し、その後中性洗剤でよく洗います。
  6. 水分が残っていると後になるので、水分を柔らかい布などで擦らないようにしながら拭き取ってください。擦ると傷ができてしまいます
  7. 微細な傷などが気になる場合は、コンパウンド剤などを使って磨くことで、艶が出ます。この時、粗めのコンパウンドや強く磨いたりすると、色がかなり落ちます(粗くないものでも多少は落ちます)。特にエッジ(角)部分については研磨で非常に色落ちしやすいので注意しながら磨くことをおすすめします。

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